「アベノミクスの三本の矢」が尽きた後に起きている危機

円安が止まらない

連日、歴史的な円安が進んでいます。かつては1ドル360円時代もあった、その当時から比べたらまだまだ円高だという人もいるようですが、円の実質実効レート(その通貨国の輸出入バランスや物価などから割り出された通貨の購買力)は1970年代の高度経済成長期を下回るところまで下がっています。(グラフは日経新聞の記事より引用)。

 

本日4月26日(金)の日銀政策決定会合は、政府が歴史的な円安に本腰を入れて対応する意思があるのかどうかを表明する絶好の機会でした。しかし、植田日銀総裁が選択したのは、「円安は基調的物価に影響を与えていない」「現在の円安は無視できる範疇」とさらなる円安を容認する発言を繰り返しました。

私がはっきり代弁しましょう。植田総裁はこう警告しているのです。「今からさらに円安が進んでも政府として打つ手はない。国民は今のうちに準備と覚悟を決めておけ」。

2012年頃から始まったアベノミクスは、黒田日銀による異次元の金融緩和を起爆剤として、民間活力の活性化を促し、経済成長を遂げるという「三位一体の改革」を理論的支柱にしていました。画像は首相官邸ページより引用。

1本目の矢については、半ば政府から言われるがまま、日銀が大量に国債を買い入れたり、過去に例のない水準で上場投資信託(ETF)を買い入れたりと、ほぼ理論通りに矢が飛びました。まさに異次元のレベルで円を市中にバラ撒いたのです。しかし、2本目の矢は2度にわたる消費税増税でほぼ効果は無効化され、ちぐはぐな経済運営を警戒した大企業は内部留保を蓄える一方で民間投資は思うように進みませんでした。これがアベノミクス下でもデフレが続いた原因です。

アベノミクスが成功した際のメリットは安倍首相やその取り巻きによって盛んに喧伝されましたが、それが乾坤一擲のリスキーな経済戦略であることはほとんど語られてきませんでした。つまり「日本に何かあったときの余力を全てこの10年間に注ぎ込んでしまった」のです。2013年~2022年の10年間は「現状維持」が続いただけでした。

そして、持てる余力を使い果たしてしまったのがまさに「2024年の日本経済」であり、海外投機筋から足下を見られるようになり、異常な円安が一方通行で進んでしまうことになりました。

 

努力と結果のミスマッチ

1980年代の「ジャパンアスナンバーワン」と称された輝かしい時代の記憶を完全に消し去って、「発展途上国化」している現状を素直に認めましょう。過去の栄光は辛い今を忘れさせてくれる麻薬のようなものです。しかし、そんなものに入り浸っていてもただの「精神勝利」でしかなく、状況は何も改善しません。

私の守備範囲の教育に関していうと、なぜ日本の中高生は欧米のティーンエイジャーよりも学習量がケタ違いに多いのに、研究開発力やお金を稼ぐ力で大きく劣ってしまうのか。努力と結果のミスマッチにメスを入れないと、この閉塞状況は何も変わりません。日本の中高生は誰よりも敏感にその「不都合な真実」を深刻に受け止めているはずです。

私にできることは限られていますが、今後を生きていかなければならない自分の生徒には今のうちから取り得る選択肢を授業の際に提示していきたいと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アベノミクスの三本の矢」が尽きた後に起きている危機