新課程版プラチカIIICが連休明けに出るらしい
YouTube動画のコメント欄に情報提供がありました。新課程版の刊行が遅れていた続木勝年先生の『理系数学の良問プラチカ数III 四訂版』(河合出版)が5月の連休明けに刊行されるそうです。この本、他のプラチカシリーズとは趣を異にしていて、非常に難解です。前回の改訂時(10年前)は中身がほとんど変わらず、プラチカファンをがっかりさせました。旧課程版に収録されている問題の多くは、2000年前後の入試問題であり、大学入試数学が最も難しかった頃のものです。その後、入試数学は標準化の流れが進み、プラチカ数III(C)までやらずとも大抵の大学には合格できるようになりました。
今回の改訂のポイントは、2000年~2023年の入試問題がどの程度採用されるかと、ベクトルが数Cに新たに組み込まれたので、続木先生がどのようなベクトルの難問をチョイスしてくるかです。私は早速アマゾンで予約注文しました。
見た瞬間に見抜きたい漸化式のまとめ
「春休み明けの実力テストで数Bの漸化式が出題されるから復習プリントを作ってほしい」という生徒がいたので、式を見たら解法の流れがスムーズに出てくるかどうかのチェック問題を作成してみました。今回は1番から5番までの解き方を解説します。後半の6番から11番はやや難の問題も含まれています。新高3生の多くは数列を既に習い終わっているはずなので、理解度チェックとして腕試ししてみてください。
$n$を正の整数とする.次の条件を満たす数列$\{a_n\}$の一般項を求めたい.どのようにアプローチすればよいか.問題のPDFはこちら→zenkashikiまとめプリント
- $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=a_n+n$
- $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=3a_n+6$
- $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=2a_n+4n$
- $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=3a_n+2^n$
- $ \displaystyle a_1=1,~a_2=3,~a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0$
- $ \displaystyle a_1=1,~a_2=1,~a_{n+2}-a_{n+1}+\frac14a_n=0$
- $ \displaystyle a_1=1,~a_{n+1}=2a_n^2-(n-1)(2n+1)$
- $ \displaystyle a_1=4,~a_{n+1}=\frac{4a_n-2}{a_n+1}$
- $ \displaystyle a_1=2,~a_{n+1}=\frac{3a_n}{2a_n+1}$
- $ \displaystyle a_1=2,~a_{n+1}=\frac{n+2}{n}a_n$
- $ \displaystyle na_1+(n-1)a_2+\cdots \cdots +1\cdot a_n=\frac{n(n+1)(n+2)}{6}$
階差数列をつくる
1. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=a_n+n$
1番は,$a_{n+1}-a_n$から階差数列を導き出して,$n=1$のときと$n≧2$で場合分けすればよいですね。
特性方程式を解く
2. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=3a_n+6$
2番は、$a_{n+1}=a_n=\alpha$とおいて特性方程式を解き、$a_{n+1}+3=3(a_n+3)$に変形してから$\{a_n+3\}$を公比3の等比数列と見なします。
特性方程式の解に$n$が入る場合
3. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=2a_n+4n$
3番を2番と同様、$a_{n+1}=a_n=\alpha$とおいて特性方程式を解くと、特性解の中に$n$が入ってしまいます。このタイプの問題は一定値の「公比」になりませんので、2番の解法が使えません。
ではどうするか。いくつかやり方がありますが、私は$ a_{n+2}=2a_{n+1}+4(n+1) $と$ a_{n+1}=2a_{n}+4n $の辺々を引くことで$4n$を消去する方法をオススメします。$b_n=a_{n+1}-a_n$とおくと$b_{n+1}=2b_n+4$となり、2番と同様の手法で$ \{b_n\} $を求めればよいです。出てきた$ \{b_n\} $の一般項は$\{a_n\}$の階差数列になっているので、1番と同じ手法で解けます。
指数に$n$が入る場合
4. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=3a_n+2^n$
4番は両辺を$2^n$で割ると、$\displaystyle \frac{a_{n+1}}{2^{n+1}}=\frac{3}{2}\cdot \frac{a_n}{2^n}+\frac12$と変形できるので、$\displaystyle b_n=\frac{a_n}{2^n}$とおけば2番の解法に帰着します。
隣接三項間漸化式の場合
5. $ \displaystyle a_1=1,~a_2=3,~a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0$
隣接三項間漸化式の問題が出てきたら、まずは特性方程式を解いて相異なる2つの実数解を導き出し、そこから2つの式を立ててみましょう.この問題の場合、$\alpha^2-3\alpha+2=0$の特性方程式を解くと,相異なる2つの実数解$\alpha=1,~2$が出てくるので,2つの漸化式を立てることができます.
$~~~~a_{n+2}-a_{n+1}=2(a_{n+1}-a_n) \cdots \cdots ①$
$~~~~a_{n+2}-2a_{n+1}=a_{n+1}-2a_n\cdots \cdots ②$
①より$\{a_{n+1}-a_n\}$は公比2の等比数列であることがわかります。また、$a_1=1,~a_2=3$より$a_2-a_1=2$であることから$a_{n+1}-a_n=2^n\cdots \cdots ③$
②より$\{a_{n+1}-2a_n\}$は公比1の等比数列であることがわかります。また、$a_2-2a_1=1$であることから$a_{n+1}-2a_n=1\cdots \cdots ④$
③と④を辺々引くと$a_n$が求まります。ここでは辺々引く形に持ち込みましたが、①を$\{a_n\}$の階差数列とみる考え方もアリです。
なお、隣接三項間漸化式を解くと相異なる2つの実数解$\alpha,~\beta$(ただし特性解に$n$が混じっていたらいけない)が出てくる場合、最終的に一般項$a_n=A\cdot a^{n-1}+B\cdot \beta^{n-1}$で表されます。そして、係数の$A$と$B$を決定するために$a_1$と$a_2$を使うことになります。この性質を知っていれば、出てきた漸化式が正しいかどうかの検算に使えます。また、特性解が重解になる場合(6番)は解法が異なるので注意しましょう。
高校数学では数列で定義される数の範囲を実数に限定している場合がほとんどですが、特性解が虚数になる場合も同じような手法で求めることができます。例えばフィボナッチ数列である$a_1=a_2=1,~a_{n+2}=a_{n+1}+a_n$も,同様の手法で一般項を求めることができます。ただし、複素数に拡張した数列は大学入試ではほとんど見かけませんし、出るとしたら数Cの複素数平面と絡めた形になる場合が多いように思います。
続きの6番~11番の解説は明日扱います。
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