数B数列の漸化式のまとめプリント紹介(後編)

やさしい理系数学の新課程版はいつ出るか?

難関大学受験生の間では根強い人気を誇る『やさしい理系数学』(河合出版)、通称「やさ理」。タイトルとは裏腹に難問揃いで、解法もできるだけ別解を多く紹介しようという方針が貫かれていて、一周どころか二周三周してもさらに美味しいという優れものです。

 

受験参考書・問題集の多くの定番書は次々と新課程版に更新されていますが、「やさ理」は依然として刊行されていません。ただ、「プラチカ数IIIC」の新課程版がまもなく出版されることを考えると、やはり「やさ理」もそう遠くない時期に出版されるのではないかと思われます。

 

そこで旧課程版の刊行時期を調べてみました。

 

初版:1998年3月(新課程入試は1997年2月から開始)

改訂版:2006年1月(新課程入試は2006年2月から開始)

三訂版:2013年7月(新課程入試は2015年2月から開始)

 

「やさ理」はこれまで新課程入試が始まる直前の1月に改訂版が出版されていたこともあるようなので、新課程版が出るまでにもう少し時間がかかる場合も考慮しておいた方がよさそうです。

 

私は今教えている生徒が文系プラチカを一通り解き終えたら「やさ理」に入る予定でしたが、まさかこんなに待たされるとは想定外でした。夏休み前までに出ないようであれば、別の問題集の繋ぎを入れなければいけませんね。今のところ考えているのが、大学への数学増刊号の『新スタンダード演習』(東京出版)通称スタ演です。

 

東京出版の「大学への数学」や「高校への数学」の増刊号は、Amazonで注文すると配送料が500円くらいかかるので、東京出版の通販サイトを利用して直接注文するのがお得です(一度に4000円以上購入なら配送料無料)。月刊誌の方は配送料かからないんですけどねえ。

 

例年4月号増刊号の「スタ演」は数IAIIBCの文系範囲で、5月号増刊号の「スタ演」は理系数学数IIICに特化した内容になっています。理系であれば2冊こなす方がよいでしょう。数年くらい改訂がないままでしたが(東京出版の問題集にはよくある)、今年はさすがに中身が大幅に改訂されている”はず”です。なお、月刊誌の方はデジタル版も出ており、紙版よりも発売が10日ほど早いようですね。

 

 

見た瞬間に見抜きたい漸化式のまとめ

「春休み明けの実力テストで数Bの漸化式が出題されるから復習プリントを作ってほしい」という生徒がいたので、式を見たら解法の流れがスムーズに出てくるかどうかのチェック問題を作成してみました。

今回は6番から11番の解説です。1番~5番の解説については、前日(4月7日)のブログをご覧下さい。

 

$n$を正の整数とする.次の条件を満たす数列$\{a_n\}$の一般項を求めたい.どのようにアプローチすればよいか.問題のPDFはこちら→zenkashikiまとめプリント

  1. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=a_n+n$
  2. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=3a_n+6$
  3. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=2a_n+4n$
  4. $ \displaystyle a_1=3,~a_{n+1}=3a_n+2^n$
  5. $ \displaystyle a_1=1,~a_2=3,~a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0$
  6. $ \displaystyle a_1=1,~a_2=1,~a_{n+2}-a_{n+1}+\frac14a_n=0$
  7. $ \displaystyle a_1=1,~a_{n+1}=2a_n^2-(n-1)(2n+1)$
  8. $ \displaystyle  a_1=4,~a_{n+1}=\frac{4a_n-2}{a_n+1}$
  9. $ \displaystyle  a_1=2,~a_{n+1}=\frac{3a_n}{2a_n+1}$
  10. $ \displaystyle a_1=2,~a_{n+1}=\frac{n+2}{n}a_n$
  11. $ \displaystyle na_1+(n-1)a_2+\cdots \cdots +1\cdot a_n=\frac{n(n+1)(n+2)}{6}$

 

 

特性方程式が重解

6. $ \displaystyle a_1=1,~a_2=1,~a_{n+2}-a_{n+1}+\frac14a_n=0$

5番のように隣接三項間漸化式の特性方程式を立てて解こうとすると、$\displaystyle \alpha=\frac12$(重解)が出てきます。5番と違って式が1つしかないので、$\{a_n\}$の一般項を求めることができません。この場合は4番の形に持ち込むのが定石です.$\displaystyle a_1=a_2=1,~a_{n+2}-a_{n+1}+\frac14a_n=0$を変形すると、$\displaystyle a_{n+2}-\frac12a_{n+1}=\frac{1}{2}(a_{n+1}-\frac12a_{n})$。よって$\displaystyle \{a_{n+1}-\frac12a_n\}$は公比$\displaystyle  \frac12$の等比数列。$\displaystyle a_2-\frac12a_1=\frac12$より、$\displaystyle a_{n+1}-\frac12a_n=\left(\frac12\right)^n$。ここまで来たら4番の解き方でいけますね。

 

 

 見たことがないような複雑な形の漸化式は代入して一般項を予想する。

7. $\displaystyle a_1=1,~a_{n+1}=2a_n^2-(n-1)(2n+1)$

7番は今回ご紹介する11問の中で最も難しい問題でしょう。数列の漸化式は本来、きれいに一般項を求められる方が珍しいのです。高校数学の中から制限時間つきで出題される大学入試問題では、必ずどこかに答えへの糸口があるものです。

見かけない形をしている漸化式を攻略するために、$n=1,~2,~3,\cdots$と代入して様子をみましょう。この問題では$a_1=1,~a_2=2,~a_3=3$となるので、$a_n=n$と予想できます。その予想が正しいことを数学的帰納法で示します。

 

 

1次分数型の隣接2項間漸化式は、特性解から攻める

8. $\displaystyle  a_1=4,~a_{n+1}=\frac{4a_n-2}{a_n+1}$

$a_{n+1}=a_n=\alpha$とおいて特性方程式を解くと、$\alpha^2-3\alpha +2=0,~\therefore \alpha=1,~2$。いずれかの特性解を用いて$a_{n+1}-\alpha$の形を作ります。ここでは$\alpha=2$を使ってみましょう。

$\displaystyle a_{n+1}-2=\frac{4a_n-2}{a_n+1} a_{n+1}-2=\frac{2(a_n-2)}{a_n+1}$と変形できるので、$b_n=a_n-2$とおくと、$\displaystyle b_{n+1}=\frac{2b_n}{b_n+3}$。ここから先は次の9番のやり方で解けます。

 

1次分数型漸化式だが分子に定数項が含まれない場合

9. $ \displaystyle  a_1=2,~a_{n+1}=\frac{3a_n}{2a_n+1}$

8番と9番は非常によく似ていますが、決定的な違いがあります。それは分子に$a_n$ではない定数項が含まれているか(8番)いないか(9番)です。と、分子に定数項が含まれていない場合は、分子が帰納的に0でないことを示した上で両辺の逆数をとります。

$a_1>0$より$a_n$は帰納的に正。よって両辺の逆数を取ると、$\displaystyle \frac{1}{a_{n+1}}=\frac{2}{3}+ \frac{1}{3}\cdot \frac{1}{a_n}$。ここで$\displaystyle b_n=\frac1{{a_n}}$とおくと、$\displaystyle b_{n+1}=\frac13b_n+\frac23$。ここからは2番と同じです。

 

 

繰り下げてみる

10. $ \displaystyle a_1=2,~a_{n+1}=\frac{n+2}{n}a_n$

この問題は解法が複数ありますが、ここでは繰り下げを繰り返すことで$a_1$までもっていきましょう。$n ≧2$のとき,$\displaystyle a_{n}=\frac{n+1}{n-1}a_{n-1}=\frac{n+1}{n-1}\cdot \frac{n}{n-2}a_{n-2}=\cdots =\frac{n+1}{\textcolor{red}{\cancel{n-1}}}\cdot \frac{n}{\textcolor{blue}{\cancel{n-2}}}\cdot \frac{\textcolor{red}{\cancel{n-1}}}{\textcolor{brown}{\cancel{n-3}}}\cdots \frac{\textcolor{green}{\cancel{4}}}{2}\cdot \frac{\textcolor{purple}{\cancel{3}}}{1}a_1$

$\therefore a_{n}=n(n+1)$。これは$n=1$のときも成立。

 

他にも、元の漸化式の両辺に$\displaystyle \frac{1}{(n+1)(n+2)}$をかける方法もあります。

 

 

代入して様子を見るパターンだが帰納法に落とし穴アリ

11. $\displaystyle na_1+(n-1)a_2+\cdots \cdots +1\cdot a_n=\frac{n(n+1)(n+2)}{6}$

一見して厄介な問題ですが、7番の方法でうまく解けます。すなわち$n=1$を代入すると$a_1=1$、$n=2$を代入すると$a_2=2$、$n=3$を代入すると$a_3=3$なので、ひとまず$a_n=n$ではないかと予想が立ちます。

ここから数学的帰納法で攻めるのですが、通常の帰納法ではうまくいきません。それは$a_n$が隣の$a_{n-1}$だけでなく、$a_1,~a_2,~a_3,~\cdots , ~a_{n-1}$の全ての項によって定義されるからです。この場合は$a_1$と$a_2$のときに予想が成り立っているを示し、$n=1,~2,~3,~\cdots, k-1$の全てで予想が成り立っていると仮定した上で$a_k=k$の成立を示します。この問題のように、前半ではなく後半の帰納法の部分に思わぬ落とし穴が待ち構えているときもあるので注意しておきましょう。

 

 

「漸化式ガチャ」で普段から瞬発力を鍛えておこう

おいしい数学」氏が「漸化式ガチャ」という便利なアプリを開発し、一般公開しています。ランダムに漸化式の問題が提示されるので、それを解くというものです。いわば漸化式の1000本ノックみたいなです。スマートフォンアプリは有料ですが、ブラウザーで使用すると無料で使えます。こうしたアプリを有効活用し、日頃から計算の瞬発力を鍛えておきましょう。

 

 

数B数列の漸化式のまとめプリント紹介(後編)